──主人公のマルチェロはどんな人物だと思いながら、演技を決めていったのでしょうか?
人物像はあらかじめイメージすることなく、少しずつ、マッテオに導かれながら出来上がっていきました。一緒に形を整えた原型を基に、最も深い側面を探り、ロケーションの雰囲気と合わせながら、そこで見つけ出していったのです。あらかじめ書かれていたエンディングのことを考えずに、物語の中を探索しました。マルチェロは死んでいたかもしれず、最後の最後までどうなるのか、私たちは知らずにいたのです。
──ご自身とマルチェロの共通点がもしあれば、教えて下さい。
多くの共通点があります。人間的な部分、自分の町との関わり方、過去に知り合った多くの人たちの小さなニュアンス、陽気さ、恐れ、道を踏み外すことへの、最後までやり通せないことへの恐れ。
──マルチェロを演じるにあたって、特別な役作りはあったのでしょうか? また、監督から何か指示や、演じるにあたってのリクエストなどはありましたでしょうか?
もちろんです。マッテオが私の水先案内人であり、この物語すべてにおいて揺るがぬポイントであり、私の強みでした。彼の顔を見て、撮り終えたシーンに満足しているかを読み取ること、それが私の判断基準でした。彼からの指示は何よりもその瞬間に自分が考えていたこととは異なること、異なる波長を見つけるために、そしてそのシーンの音を聴くために役立ちました。彼がよく私に投げかけた問いは、私が音楽をやっていたことから、音楽用語を使ったものだったのですが、こんな風に訊いてくるのです。「このシーンはちゃんと鳴っているかな? それともどこか音が外れているかな?」
──昨年のカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞しました。その時の気持ちはいかがでしたか? また受賞したことで、何か変化はありましたでしょうか?
受賞を願っていたかもしれない人たちすべてのために限りない悲しみを味わい、心底申し訳ないと思いましたが、人生は私のような無知な人間に賞を与えることにしたのです。冗談は抜きにして、仕事をした我々すべてのためにも、マッテオの、ガウディオーゾの顔に浮かんだ歓びを目にすることができてうれしい思いでした。これでやっと、自分もたまには友達に食事をおごることができるようになりました、以前はだいたい皆が払っていましたから。
──本作が高い評価を受ける理由はなんだと思いますか?
何よりもこの映画が何も期待することなく、撮る歓びと共に撮られたことです。
──次回作『Pinocchio(ピノキオ)』でもマッテオ・ガローネ監督とタッグを組んでいますが、ガローネ監督との仕事はいかがですか?
ええ。マッテオの次回作にも出ます。カメオ出演をすることになっていて、とてもうれしく思っています。
──好きな俳優、影響を受けた俳優はいますか?
アル・パチーノ、バスター・キートン、ダニロ・ニグレッリ、シルヴィア・ガッレラーノです。
──本作は日本で8月に公開となります。日本の観客へメッセージをお願いします。
心のおもむくままに任せて、自分の目で物語の中へ入っていってください。映画の扉は開かれていて、想像力や、観客の解釈を自由に羽ばたかせてくれます。
これは皆さんのためにこそ、作られたものなのです。
これは皆さんのためにこそ、作られたものなのです。